アクションRPGの始祖について

新年あけましておめでとうございます。昨年はコロナ渦であるにもかかわらず、お店に足を運んでいただき誠にありがとうございました。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

さて昨年、BEEPにPCゲームに関する歴史をまとめた本を探しに来店されたお客様(メスネル氏)との、ちょっとした出会いをブログにして頂き、さらにそのブログが日本語化され、一部で話題となっていましたので、今更ではありますが自分の視点も一緒に載せておこうと思います。

まだ記事を読んでいない方は、是非読んでみてください。

原文
https://medium.com/@obskyr/the-secret-origin-of-the-action-rpg-254a180079dd

日本語の要約
https://gigazine.net/news/20200816-action-rpg-history/

休憩から帰ってきたところ「アクションRPGの始祖について調べてる人がいるので、わかる範囲で教えてあげて欲しい」とスタッフに言われ、海を渡って来店されたメスネル氏を紹介されました。最初は記事にもあるようにアクションRPGの歴史が書かれた本が無いか教えて欲しいとのことだったのですが、残念ながら日本にはそういった書籍は殆ど無く、情報を得るのが非常に困難であるため、過去に自分が聞いたり、調査したことを話した方が良いと思い、お話をしました。

ただこの時、アクションRPGについては日本でもまだまだ未開の部分が多く、定義が非常に難しいので、始祖を教えてほしいと言われて少し困ったな。という思いもありました。

そんな中お話を聞いてみると、海外の方では「ドルアーガの塔」がアクションRPGの始祖という認識があることがわかりましたが、「ドルアーガの塔」は経験値の概念が無いため、個人的な観点から言うとアクションADVの部類(ゼルダの伝説など)に入ると判断し、日本国内のアクションRPGのジャンル黎明期でよく挙げられるタイトルである「Dragon Slayer」「カレイジアスペルセウス」「ハイドライド」の3作品を挙げました。

ドルアーガの塔ドラゴンスレイヤーカレイジアスペルセウスハイドライド

記事にも書かれているように個人的に「Dragon Slayer」をアクションRPGの始祖としましたが、ドラスレは「時間制限のあるターン制」のゲームなので、日本人的な「アクション」の感覚からすると違和感があるのは間違いないため、「カレイジアスペルセウス」「ハイドライド」が元祖であり「アクションRPGを決定づけたのはハイドライド」というのが、日本人的かつ常識的な歴史観だと思います。

そして記事にされていませんが、実はここから自分も想像しない衝撃の真実を知ることになるとはこの時思いませんでした。それは、3本のゲームの紹介の後、日本では「Wizardry」「Ultima」あたりがRPGの原点とされているけれど、海外でも同じなのだろうか。それとも「Akalabeth」「Temple of Apshai」あたりがRPGの原点とされているのかが気になり、メスネル氏に「コンピューターゲームにおけるRPGの原点は、海外だと何になるのでしょうか?」と質問したところ、「Oubliette(ウーブリエット)」と言う自分の全く知らないPLATOのゲームをメスネル氏が教えてくれました。この時、まだ自分の知らないゲームがあるのかという衝撃と、まだまだ知識が足りていないことに軽いショックを覚えつつ、「Oubliette(ウーブリエット)」という未知のソフトに心が魅了されました。ちなみに、「Temple of Apshai」と「Akalabeth」は「Wizardry」やPLATOに関わらず、別々に開発されたので「RPGの原点」というよりも「RPGの原点の一つ」と言った方がふさわしいでしょう。とメスネル氏から回答いただきました。

 

Oublitte画像1Oublitte画像2

ここで、自分が知らないゲームを知っているメスネル氏なら、「Dragon Slayer」の原点となった「The Caverns of Freitag」を知っているかもしれない。と思い、「The Caverns of Freitag」のことを訪ねた所、誤訳していたようで、うまく伝わらなかったため、動画を探してメスネル氏に見せました。そしたら欧米でも知名度が低く、自分が紹介するまで知らなかったようで、改めてアクションRPGの歴史的研究はこれからもなされていくのだろうと思いました。

と書いたところで、いくつか後に調べて分かったことを書いておきます。

まずRPGの定義なのですが、メスネル氏に話をした時、自分の中でのRPGの定義はRPGメカニクス(敵を倒した経験値=プレイ時間によって、プレイヤー自身がゲームの難易度を調整できる)を使用した物をRPGとしていたので、「ドルアーガの塔」は違うと判断しましたが、当時のRPGは主人公を演じることがRPGとされていた側面もあるので、当時の見方で見ると「ドルアーガの塔」もアクションRPGといえなくもないでしょう。

次に「Oublitte」なのですが、どうやらこの当時「Oublitte(1977年)」以外にも「pedit5(1975年)」「Moria(1975年)」「dnd(1975年)」「Avatar(1979年)」など同じようなRPGがPLATOで複数存在しており、制作されて現存するRPGの始祖となると、自分の調べた限りでは1975年に登場した「pedit5(※1)」「Moria(※2)」「dnd」のどれかになるものと思われます(なお、現存せず失われた最初のコンピュータRPGは1974年に登場した「m199h(※3)」である)。これについては、おそらく今後もまた新しいものが発見されていくと思いますので、歴史的新しい情報が出るのを楽しみに待つことにします。

長々と書いてきましたが、いかがだったでしょうか。この話が少しでも誰かのお役に立てば幸いです。もし間違いがありましたら、直接店に来て間違えてますよ!と優しく教えてください(笑)。

では皆様ご拝読ありがとうございました!

byテリー

※1. 現在でもcyber1 (PLATOエミュレータ) 上で稼動しており、Windowsパソコン等があれば完全無料でプレイすることができます。

※2. ローグライクのMoriaとは違うMoriaです。

※3. 外国語指導のために確保されていた「レッスンユニット」(つまり固定ドライブ内のスペース)上で作成されたが、ドライブ内の不正なプログラムとして発見され削除された。

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